家の本棚をボンヤリ眺めていて目についたのが、武者小路実篤の詩集。
この詩集は、武者小路実篤の青春期から晩年までの代表的な詩を年代順に収録してあります。
手にとって、少し読んでみました。
初めて読んだのが30歳くらいのころだったろうか。
今でも憶えているのが「或る男」という詩。
或る男
私は56になるが
時々心のうちで言ふ
今にすばらしい人間になってやる。
すばらしい人間になるとは
すばらしい小説をかくと言ふのか、
すばらしい画をかくと言ふのか
人類を救はうと言ふのか、
私は知らない。
たださう言つて見るので
自分が若々しく元気になれ
希望がもてるのを感じる許(ばか)りだ。
私は今にすばらしい人間になつてやる。
初めて読んだときは、「56歳にもなって、いまさら、なんて青いことを言っているんだろう」と感じた。
56歳という年齢は、もう社会的に成功して分別もある成熟した大人になっているもんだと思っていた。
でも、ボクも今年で54歳。
分かる!武者小路実篤が詠んでいた詩の意味が。
ボクも50歳をとうに過ぎたというのに、心の中はまだまだ若い。10代の頃の自分や20代の頃の自分が、ひょいと顔を覗かせる。
しかし外見は、年なりに衰えた。それは、少し残念。
ところが、精神年齢はまだまだ若い。この事実は、自分が年をとってみないと分からない。
ボクの周りには、80歳、90歳以上の人生の先輩方がいる。
その人達の心のなかにも、青春時代の顔を覗かせているのだろう。そう思うと、面白い。ただ外見だけが年老いて行くが、心の中は若い部分がかなり多いのだ。
さあ、ボクはこれから、どんなすばらしい人間になってやろうか。
とりあえず、サーフィン上手くなろう。笑
武者小路実篤のその他の本、おすすめ
武者小路実篤の恋愛三部作と呼ばれる本も、面白い。若い人には、ぜひ読んで欲しい。