「ここに90年以上住んでるけど、こんなにもすごい風は初めてだお」
近所に住む90歳を超える男性は、そう話しかけてきた。
会う人、会う人、「ここに生まれて、こんなのは初めてだよぉ」と口をそろえる。
2019年9月8日深夜に房総半島を襲った台風15号は、観測史上いちばんの風速を関東各地で記録した。
台風発生当時はコンパクトな台風に見え、たいした被害はないとボクは思っていたのだが、こんなにも被害が出るとは。
「千葉県南部は、日本で一番住みやすいところだよ」
東京から鴨川へ移住してきてから、土地の人から幾度も聞いた言葉だ。
海、山からの恵みが豊富で、何より自然災害が少ないというのが、その理由である。
毎年のように被害がある九州地方に比べると、実際に千葉県は自然災害がほとんどない。
でも、これからは違ってくるかもしれない。
今回のような暴力的な台風がしばしば来るようなことになったら・・・。
「房州人は、あばらが1本足りない」などとは、もう言っていられない。
台風15号の被害
台風の風は夜が深まるにつれ、どんどん強くなってきた。
たまに吹く突風の「ゴォー」という音とともに、家が揺れる。怖い。
深夜の2時ころ、突然電気が消える。停電だ。
真っ暗な家の中で、台風の強風におびえながら朝を迎える。
自宅の状況
やっと、外が明るくなってくる。
心配をしながら家の外に出て、まず家が無事かどうかの確認をする。
家の前の杉の木が倒れて、家のフェンスが壊れていた。
あと、テレビアンテナが全壊。
そして、家の周りをぐるっとチェックしたが、建物の損傷はないようだ。
とりあえず、ほっと一安心。
後日、瓦が1枚割れているのを発見。
街の状況
つぎは、仕事場の安否を確認するために軽トラを走らせる。
ボクの仕事は、養蜂業。
蜂蜜を生産して、販売している。
まずは、隣町の蜂場へ。
停電しているので、道路の信号は消えている。
交差点は、慎重に走らなければ。
軽トラで道を走っていると、今回の台風のスゴさがだんだんと分かってきた。
今までの台風とは、桁違いの被害だ。
屋根がすべて飛んでいってしまった家、瓦がバラバラと落ちている家、建物自体が崩れているものなどなど。
![](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/1909167.jpg)
屋根がすべて飛んでいってしまった。後日、建物は取り壊されるていた。
![2019年台風15号の被害](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/1909168.jpg)
半壊した建物
![2019年台風15号の被害](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/1909169.jpg)
倒壊した牛乳収集小屋
![2019年台風15号の被害](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/19091612.jpg)
折れた電柱
![2019年台風15号の被害](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/1909166.jpg)
瓦が落ちた建物
蜂場の被害
隣町の蜂場へ到着。
ああ、ほとんどの蜂箱が倒れている。
蓋は飛んでいき、巣脾はあたりに散乱している。
巣に挟まれて死んでいるミツバチ、大雨で凍死して黒く変色しているミツバチ。
倒れた巣箱のまわりでは、ミツバチが心配そうに「ぶんぶん」飛んでいる。
こんなことは、養蜂人生16年で初めてのことだ。
とりあえず、倒れた巣箱を起こす。
女王蜂が死んでいなければ良いのだが。
女王蜂が死んでいなければ、蜂群復活の可能性がある。
別の蜂場へ移動
別の蜂場へ行くと、クリの太い木が倒れて巣箱に直撃している。
動かそうとしても、ぶっとい木なので、びくともしない。
のこぎりでクリの木を切断して、巣箱を救出する。
他の巣箱は半分くらい倒れていた。
とりあえず、巣箱を起こして元通りにする。
母の家の補修
近くに住む母の家は、瓦が飛んでしまった。
翌日に知り合いの大工さんに修理をお願いしたら、30人待ちだと言う。
修理を待つ間に雨漏りを防ぐために、屋根にブルーシートを掛けなければならない。
状況を聞いて、週末に弟2人が名古屋、浦安から来てくれた。
そして、兄弟3人で屋根にブルーシートを掛ける。
1階と2階の2箇所に掛けた。
素人がやったにしては、なかなかの出来栄えではないだろうか。
修理が終わるまで、大風でブルーシートが飛ばないことを祈るのみだ。
![2019年台風15号の被害](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/1909164.jpg)
車庫の波板も壊れてしまった
自衛隊も出動
台風が過ぎてから4,5日すると、自衛隊がやってきた。
国道で自衛隊の車とよくすれ違う。
![2019年台風15号の被害](https://hojinsha.com/wordpress/wp-content/uploads/1909161-1.jpg)
近所の道の駅には、自衛隊の仮設風呂が設置された
その他の被害や出来事
ガソリン不足
最初の数日間は、停電でガソリンスタンドが開いていなくて大変だった。
やっと開いているところを見つけて、軽トラにガソリンを入れてもらう。(1台10リットルだけの制限販売)
ここは、手回しでガソリンを補給できるので、停電でも大丈夫だったのだ。
仕事場も被災する
隣町(鴨川市)の仕事場も被災。
- 屋根の瓦が飛ぶ
- 玄関が壊れる
- 部屋の障子のガラスが割れる
- テラスがひっくり返る
- 台所の雨漏り
- 倉庫の屋根が壊れる
ミツバチの世話は休めないので、少しずつ補修していくしかないなぁ。
蜂場へ続く道の倒木
蜂場へ続く山道では3箇所の倒木があり、軽トラでは行けないので歩いていかなければならなかった。